桜の木の下で

私が新卒で老人ホームで働いていた頃、実際にあった話を紹介したいと思います。

(プライバシーのため少し変えている箇所はあります。)

働きだして初めての看取りで、とても印象に残っている出来事です。

何か感じていただけると嬉しいなと思います。

元気だったのに徐々に喋れなくなっていった

ある女性の入居者様、Oさんがいました。

Oさんは90歳でとても元気で可愛らしくて、職員が

「今日も体調どうですか?」

と聞くと大きな声で

「上等や!」

と笑顔で言ってくださる方でした。

 

しばらくして体調を崩され、体力が落ちてきました。

そして体調を伺うが以前のように「上等や!」と大きな声は出すことができなくなりました。

寝たきりの状態が続き、ご飯を食べるのも介助が必要な状態になりました。

 

どうしたらいいか考える

元気もなく、喋れなくなっていたOさん。

どうしたら元気つけられるのか考えていたとき、ちょうど生活支援員が

「今から桜の木を見に行こう!」

と言ってくれました。

私もすごくいいなと思ったのですが、リーダーも不在だしフロアも職員が足りていませんでした。

また今度かなと思い、悩みました。

「息子さんもいるし、今日行けそうだったら行かない?

桜も散ってしまうだろうし、いつ行けるかも分からないから。」

生活支援員は言いました。

 

息子さんと相談室で話してみると

「ずっと行けてなかったし、ぜひ行きたいです。」

と言ってくださり、強行で桜の木を見に行くことに!

 

提案を実行する!

少し肌寒く、厚着をして車椅子で車に乗り込みました!

元気がなさそうだったOさんも、心なしか目が輝いているように感じました。

 

到着し、桜の木の下で車椅子を息子さんが押して歩く。

桜が散っているのを見ながら、入居者さんは笑顔でニコッと笑っていました。

桜の木の下で写真をパシャリ。

息子さんは車椅子に座っているOさんの後ろで、少し涙を浮かべているようにも見えました。

 

近所の桜の木を見に行くだけなのに、こんなに遠くまで行ったような気がしたのは初めてでした。

 

声が出た!

帰ってきて他の職員から

「どうだった?」

と聞かれると

「上等や!」

と笑顔のOさんが小さな声でしっかりと喋ってくれました!


喋れなくなったOさんが喋ってくれた!

ほんとに感動しました!

 

体調の悪化

そして次の日、体調が急変し病院へ救急搬送されました。

 

3日後、息子さんが施設に来てくださって

「まだ安心できないようですが、体調は安定してきたみたいです。」

と話してくださりました。

 

そして施設から病院へ向かわれたすぐに息を引き取られたと聞きました。

まるで息子さんを待っていたかのようでした。

 

今思うこと

違う日に桜を見に行くことになっていたら、こうやってOさんと息子さんは一緒に桜を見ることはできなかったと思います。

本当に思い立ったときに行動して良かったと心から思いました。

 

毎日生きている中で、どんな人でも明日はないかもしれない。

明日でいいかと思ったときには後悔しているかもしれない。

一日一日を後悔がないように、一瞬一瞬を一生懸命生きることが大切なんだとOさんから学びました。

 

そして今でも桜の季節になると毎年Oさんと息子さんのことを思い出します。

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